人生に大きな変化を迎え、ふと思い立ち高野山で結縁灌頂を受けました。
しかし、儀式の最中ふと心に迷いが生じ、その想いを振り払うことができないまま、儀式が終了したのでした。
終了後、ぼんやりしながら足の向くまま道を歩いていると、導かれるように奥の院・燈籠堂へとたどり着きました。
お堂に入り大師に手を合わせ「申し訳ございません、疑念を抱いてしまいました。明日、心を改めて儀式に臨みます。」そう誓い、その夜は心静かに過ごしたのです。
そして迎えた翌日——心新たに結縁灌頂を受けると、まるで優しい光に包まれるような感動と何とも言えない安心感が胸に広がりました。
儀式を終え、再び奥の院・燈籠堂と向かい、そっと目を閉じ報告しました。
すると、心の奥で何かがほどけ世界が透き通るような清々しい気持ちが広がり涙が込み上げてきた瞬間、
ふと気配を感じ目を開けると、奥からすうっと大師が現れ穏やかな微笑みを浮かべながら、私の頭をポンポンと撫でふわりと姿が消えました。
胸がいっぱいになっている私に、僧侶の方が近づき「おさげしたので」と果物とお饅頭を手渡してくださいました。
まるで大師が「よく来たね」「それでいいんだよ」と優しく語りかけてくれたようでした。
こうして私は、新たな気持ちで高野山を後にしました。
大師は今もこの地で静かに瞑想を続けています。
時を超えて、変わることのない慈愛とともに。

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